アレルギー性疾患について
〇アレルギーの子どもが増えている
例えばアトピー性皮膚炎は、つい50年ほど前までは約1000人に1人、70年ほど前は約1万人に1人以下というものでした。
しかし現在では、軽いものまで含めると子どもの約3人に1人にアトピーが見られます。他も同じで、花粉症は、現在では国民の約2人に1人と見積もられています。
〇アレルギーの原因は「腸内細菌」にある
親がアレルギーだと子どもにもアレルギーが出る遺伝の問題は、これは、半分は正しいが、半分は間違っています。
遺伝とは体の特徴などが親から子へと受け継がれることですが、本体は細胞内のDNAによって構成される遺伝子です。
遺伝子は体の設計図であり、背の高さ、髪の毛の色、がんになりやすい・なりにくい、感染に対する反応など体のあらゆる特徴を決めています。
少し前まではこれらの体の特徴は、遺伝子のDNAの配列のみで決まるものと考えられてきました。
しかし、DNAの配列が全く同じであっても、体の性質が変化することが解って来ました。それぞれの遺伝子が働くかどうかにはスイッチがあり、このスイッチの切り替えは、日常生活の積み重ねにより変化します。
そして、大事なのが遺伝子の配列だけではなく、この遺伝子の働き(スイッチのオン、オフ)も世代を超えて子に遺伝していくということです。
アトピーだけでなく、現代病や障害(アレルギー、自己免疫疾患、がん、生活習慣病など)が増えている最も根本の原因は、先進国で数世代前から始まった日常生活の変化にあるのです。実際に、開発途上国では現代病がほとんど見られません。
〇微生物の排除が免疫の暴走を引き起こしている
歴史的に注意深く見て行くと、産業革命から始まる生活の変化、とくに微生物を排除する行為が遺伝子の働きを変化させた一番の原因と考えられます。
病原菌を排除する、炎症を起こす、アレルギー反応を起こす、体にできたがんを排除するなど、私たちの体を守る作用である免疫反応は、通常は私たちの体の免疫細胞が担当しています。
しかし、この反応をどの程度から始めるのか?どのくらいの期間にわたって、どのくらいの強さで起こすのか?などの免疫反応の強弱をつけているのは、私たちの体に共存しているおびただしい数の常在菌、とくに腸内細菌であることが明らかになってきました。
産業革命から私たちの生活は衛生的になり、微生物との触れ合いが無くなってきています。それは、悪い事ばかりではなく、歴史の必然です。しかし、あまりのも行き過ぎてしまうと、現代の先進国に暮らす私たちは、生まれながらにしてこれらの現代病を起こしやすいという遺伝子のスイッチが入ってしまっているのです。
〇アレルギーになるメカニズム
1、免疫のアンバランス
免疫反応には、細胞性免疫と液性免疫があります。細胞性免疫とは、本来の自分ではない異常な細胞を排除する免疫。こちらが過剰反応すると自己免疫疾患(膠原病)を引き起こします。そして液性免疫とは、細胞以外の異物(細菌や毒素)を排除する反応。こちらが過剰反応するとアレルギーを引き起こします。この両者が拮抗し、他方の反応を抑制するという特徴があります。
出生後は徐々に液性免疫から細胞性免疫へのシフトが起こりますが、これに最も重要なのが、なるべく生後早期に微生物と接触することが考えられています。
乳児期は手に触れたものをすべて口に持っていきますが、これは、なるべく自分の周囲の微生物を取り込もうという自然の作用なのです。自然に起こることで無駄なものは何一つありません。
2、必須脂肪酸のアンバランス
ω(オメガ)-3系とω―6系の2つの系統がある。
ω-3系は、エゴマ油やフラックスオイルのα―リノレン酸や魚からのEPA。
こちらは代謝され、最終的に炎症、アレルギー、がんなどを抑える生理活性物質になります。ω―6系は、リノール酸(ほとんどの植物油)や肉からのアラキドン酸は代謝され、炎症やアレルギーを直接引き起こす生理活性物質になります。魚に含まれるのはω―3系ですので、魚を取る習慣は日本人の健康を支えてきたと考えられます。昔ながらの自然で伝統的な和食が良いことが解ります。
3、自律神経のアンバランス
現代の子どもたちの生活を見てみますと、空調された室内で過ごすことが多く、夏は涼しく、冬は暖かい状態です。外で体を使って遊ぶ機会が減り、運動不足になっています。室内でも、テレビ、ゲーム、スマホ、あるいは勉強ばかりする子どもが増えています。飽食で何でも食べられ、特に甘い物にあふれています。簡単に言うと、慢性的に怠惰で甘えた状態といえ、自律神経が偏り過ぎた状態になっております。
〇アレルギーに対する基本的な対策
すべての病気に共通することですが、病気は、今までの自分の生活が自然の法則から外れているために起こります。まずは、この自覚が回復への第一歩です。
アレルギー性疾患や自己免疫疾患(膠原病)は、ともに免疫の異常による病気です。例えば、アトピーは皮膚の病気ではなく、免疫異常によって主に皮膚に症状が現わる病気と考えるべきでしょう。皮膚に何かを塗ったり、スキンケアをすることが根本の治療ではありません。不自然な生活習慣を改め、免疫状態を正常に戻すことにより自然に治る病気なのです。
〇アレルギー性疾患全般に対する基本的な対策
(あらゆる病気に対する対処として共通の考え方になる)
1、行き過ぎた衛生管理をやめる
微生物を排除していることが、免疫の暴走を引き起こす。未来の子ども達のためにも、今の私たちにできることを考え、出来るだけ環境に優しい衛生管理を心掛けましょう。
2、適度な運動をする。子どもは積極的に外で遊ばせる
適度な運動は、体温や基礎代謝を高め、自律神経のアンバランスを改善し、さらには夜にぐっすりと寝ることにもつながります。外に出ることで日光を浴び、微生物とも積極的に触れ合うことになります。遊びだけでなく、農作業や様々な運動をするのも良いでしょう。
3、抗生剤やうがい薬は極力使用しない
抗生剤の使用は、おそらく腸内細菌などの常在菌にとって最もダメージを引き起こします。重篤な感染症など必要な時には、むしろ積極的に使わなければなりません。しかし、現代の医療では明らかに使い過ぎです。
4、ワクチンは極力受けない
現代の日本には、接種が義務のワクチンはありません。すべてのワクチンが必要とも思われません。
5、牛乳、白砂糖、小麦、肉食を控える
アレルギー反応を含めた免疫を調節している腸内細菌にダメージを与えるこれらの食品は、なるべく控えた方がいいでしょう。
6、油は控えめに使用する(マーガリン、ショートニングは使用しない)
先ほどの必須脂肪酸のアンバランスの項で説明しました。
現代の人は揚げ物や炒め物、お菓子などを取り過ぎているので、ω-6系の油をなるべく控える必要があるでしょう。また、ω―3系の油は酸化されやすいという特徴があります。加熱料理には、なたね油(国産、非加熱、圧搾のもの)かオリーブ油を少量で使用するのがいいと思います。(これらは必須脂肪酸でないωー9系優位の油です)
7、化学物質を避ける(食品添加物、加工品、農薬、経費毒、可能なら薬も極力控える)
これらの化学物質はその毒性だけでなく、いずれも微生物を排除するものです。
私たちの体は、自然界に本来あるべき状態で存在しないものは基本的に毒として認識します。解毒器官の要である肝臓や腎臓に負担をかけるだけでなく、自律神経や内分泌(ホルモン)系を混乱させます。
8、腸内環境を整える
食事では少食、食物繊維・発酵食品・乳酸菌・酵素を積極的にとる、よく噛む、冷たいものや、食品添加物を取らない。生活では、なるべく抗生剤、うがい薬、抗菌グッズなどの化学物質を使用しないこと。
腸および腸内の状態が人の健康にとって最も大切です。腸内環境を整えることで、健康上のあらゆる問題が解決すると言ってもいいでしょう。
9、規則正しい生活をする
自律神経、免疫系、ホルモン系を整えます。
⇒「早寝早起きが一番の健康法」参照
10、ストレスをためない
最も重要なこととも言えます。
⇒第7章を参照
(「自然に沿った子どもの暮らし・体・心のこと大全」
七合診療所所長 本間真二郎先生の本から引用させていただきました)